地球温暖化、環境問題が人間の生活だけではなく、地球上の全ての生態系を脅かしている現代において、「Earth」(地球)をテーマにしたコンピレーションほどタイムリーなものはない。 「Ripples」シリーズ第二弾となる「Earth」は、土臭 い、暖かみのある、土着的で、地球の鼓動を感じさせる楽曲が満載のコンピレーションだ。選曲を担当したRush! Productionの高山康志が、日本を代表するインディ・レーベル、ラストラムと共同で企画したこのコンピレーションは、大自然、ビーチ、アーバン・ライフ、旅行など、あらゆるシチュエーションに対応するリスニング・ジャーニーとなっている。「Ripples」とは、そもそも「さざ波」や「波紋」を意味しているが、今作「Earth」を聴いた一人一人のリスナーから、地球上にポジティブなバイブレーションが広がっていくように、という願いが今作に込められている。 コンピのオープニングを飾るデヴィッド・アクセルロッドとは、ドクター・ドレからDJシャドウなど、数え切れないほどのヒップホップ・アーティストにサンプリングされたコンポーザー/アレンジャー/プロデューサーだ。60年代から活躍しながらキャノンボール・アダレイ、エレクトリック・プルーンズ、ルー・ロウルズなど幅広いアーティストを手掛け、ソロ名義では『Songs Of Innocence』や『Songs Of Experience』などのクラシックを生み出してきた。"The Dr & The Diamond"は、彼の再評価に繋がった、モ・ワックスから2001年にリリースされたアルバムに収録されており、彼が得意とするジャズ、クラシック、ファンク、サイケ・ロックを融合させたサウンドが、神秘的な深林に迷い込んだような心理映像を連想させる2曲目は、ポスト・ロックの創始者でもあるシカゴ出身のトータスの5枚目のアルバム「It's All Around You」(2004年)に収録されていたが、ロック、ジャズ、エレクトロニカ、ダブ、ミニマリズムなどに影響されながらも、彼らは全てのジャンル を超越した唯一無二のサウンドを確立させた。3人のドラマー、ベーシスト、ギタリストというこれまでにない編成が織りなすメランコリックなメロディを聴いていると、宇宙から地球を見ているような感覚さえ覚える。 "Hit The Right Thing (DJ Delight)"を提供したナチュラル・カラミティこと森俊二は、日本でいち早くギターなどの生楽器を、サンプリング、ビートメイキング、アンビエントな要素と組み合わせ、海外でモ・ワックスやギャラクシアが打ち出していたサウンドに匹敵する独自のサウンドを打ち出してきた。サーファーでもある森俊二はメロウなサウンドで知られているが、この曲は珍しくアグレッシブなグルーヴが主体となっている。 メジャー・フォース・プロダクションズの"Sax Hoodlum"のサックスと強靱なビートは、アフリカの草原を連想させるようなワイルドなトラックだが、高木完を中心に中西俊夫、K.U.D.Oの3人で作ったこのユニットは、日本のヒップホップの歴史におけるパイオニアであり、彼らがいなければジャパニーズ・ヒップホップ・シーンは存在しなかった、と言っても過言ではない。93 年にリリースされたレア盤「Grass Roots Dub」に収録されている。 今作に2曲提供しているトミー・ゲレロは、スケートボード界の伝説として知られ、ミュージシャンに転身してから、メランコリックなギター・プレイと骨太なビートで世界中のリスナーを魅了してきた。彼のデビュー・アルバム「Loose Grooves & Bastard Blues」に収録されている"So Blue It's Black"の涙をそそるメロディは、彼のトレードマークでもある曲。トミーは環境問題や 社会問題への関心も高く、様々なチャリティ・イベントに出演することも多いが、彼の「Year Of The Monkey」に収録されていた"Knives Fighting Guns"はまさに、戦争反対のメッセージを訴えるパワフルなインスト・チューンだ。彼の最新作「Living Dirt」も要チェック。 ブラックトップ・プロジェクトは、先述のトミー・ゲレロに加え、プロ・スケーターであるレイ・バービーやマッド・ロドリゲス、チャック・トリースによるスケーター・バンドだが、ファンク、ロック、ジャズ、パンクをブレンドさせた彼らの有機的なサウンドは、熱帯雨林やエキゾチックな国の風景を連想させる。 このコンピにマニー・マークの楽曲が3曲も収録されているが、日本人とメキシコ人の血を引く彼は、ビースティー・ボーイズの1992年のアルバム「Check Your Head」やベックの「Odelay」にキーボード奏者と参加して注目を浴びた。ビンテージ・キーボードの造詣が深い彼は、ソロ・アルバム「Mark's Keyboard Repair」を1995年にリリースし、ファンク、ポップ、ヒップホップをミックスしたローファイなサウンドで知られるようになったが、卓越したシンガーソングライターでもある。 "Turkey Pot Pie"は彼のルーツに戻ったジャパン・オンリーのインスト・アルバム「Fight For Your Rice」、"Tomorrow's Gold"と"Black Butterfly"もジャパン・オンリーのアルバム「Father Demo Square」に収録されている。現在マークは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズとコラボレーションをしているという噂もあるので、彼の動向から目が離せない。 ロード・ニューボーン・アンド・ザ・マジック・スカルズは、先述のマニー・マーク、トミー・ゲレロ、そしてユビキティ所属のマルチ楽器奏者ショーン・リーによるスーパーユニット。ファンク、ロック、サイケに加え、エスニックな要素を取り入れたこのグループの国境を越えたサウンドは、まさに「Earth」の世界観にピッタリ。ショーン・リーは、ネイティブ・アメリカンとレバノンの血を引き、米国カンザス州で生まれながらもロンドンを拠点に活動しているが、ドラム、ギター、ベース、キーボードなど全ての楽器を弾きこなし、「Ping Pong Orchestra」を始め数々の作品をユビキティ・レコーズからリリースしている。トミー・ゲレロがリミックスした彼の"The Maidens Tale"を聞いていると、砂漠地帯と照りつける太陽のイメージが湧いてきそうだ。9曲目にフィーチャーされているベイ・ベイは、中国出身で現在カリフォルニア在住の著名な古箏奏者だ(古箏とは、日本の琴に似た中国の伝統楽器)。ショーン・リーは、カリフォルニアでロード・ニューボーンのレコーディングをしている際に彼女と出会い、彼女の演奏に魅了され、アルバム「Into The Wid」をプロデュースする に至った。中国の伝統音楽、ジャズ、ファンクがミックスされた"Hot Thursday"は、アジアの歴史の重みと同時に、アジアの豊かな大自然を感じさせる。 メキシカン・インスティテュート・オブ・サウンドは、メキシコ・シティを拠点に活動するカミロ・ララが率いるプロジェクトであり、エレクトロニクスとメキシコの伝統音楽やラテン・ミュージックを融合させ、メキシコの新しいエレクトロニック・ミュージック・シーンの中心的存在として注目を浴びている。マニー・マークも彼らのアルバム「Soy Sauce」に参加したが、そのアルバムに収録されている"Te Quiero Mucho"を聴いていると南米のジャングルに迷い込んだような感覚を覚える。 レイ・バービー・アンド・マットソン2は、Element所属のプロ・スケートボーダー、レイ・バービーと、サンディエゴ出身の双子ジャズ・ユニット、マットソン2によるプロジェクト。レイ・バービーは、ギャラクシア・レーベルからソロ作品「In Full View」と「Triumphant Procession」をリリースし、流麗なギター・プレイで注目を浴び、先述のブラックトップ・プロジェクトのメンバーでもある。マットソン2は今作のアートワークを手掛けたサーファー/画家/映画監督であるトーマス・キャンベルに発掘されたが、10代からビバップ・ジャズを学んだ双子ジャレッド(ギター)とジョナサン(ドラムス)はジャズ、ポスト・ロック、サーフ・ミュージックを取り入れた斬新なサウンドを確立した。"Julian"はマットソン2のデビュー作「Introducing」に収録されており、"Cheeks"はレイ・ バービー・アンド・マットソン2のセルフ・タイトルのアルバムに収録されているが、両方の曲を聴いていると、カリフォルニアの夕日、ヤシの木のイメージが心の中に焼き付く。 ザ・マムラーズは、レイ・バービーやマットソン2と同じく、トーマス・キャンベルが運営するギャラクシア・レコーズに所属しているが、フォーク、ブルース、カントリーなどのルーツ・ミュージックに影響され、カリフォルニア州サンノゼを拠点に活動している6人組のグループだ。そんな彼らがビンテージ楽器で作り上げる色あせない土臭いサウンドを聴いていると、別の時代にトリップしたような、セピア・カラーの世界観が目の前に広がる。 中国語で"アイスクリーム"を意味するビン・ジ・リン は、トミー・ゲレロのバンド、そしてニューヨークを拠点に活動するニュー・ディスコ/サイケ・ロック・バンド、フェノメナル・ハンドクラップ・バンドのメンバーでもあり、あらゆる楽器を弾きこなすシンガーソングライターでもある。スティーヴィー・ワンダー、シュギー・オーティス、プリンスの影響を感じさせる彼のソ ウルフルな歌声をフィーチャーした"Where Is Your Love"は、「So Natural」に収録。彼の新作「From Shadow To Shine」も必聴だ。 今作の写真とアートワークを手掛けたトーマス・キャンベルは、サーフムービー「Seedling」、「Sprout」、「The Present」の監督として知られており、映画の中で大自然や海の大切さを訴えてきた。トーマスは、ジャケの写真についてこのように語る。「この写真は、俺が『Sprout』の撮影でモロッコに行ったときに撮ったんだ。たまたまロバが通ったので、(プロ・サーファーの)ダン・マロイに、ロバを追いかけてもらって写真を撮ったんだ。これは、北アフリカの夕日をとらえた写真なんだよ」人間と動物が交差する偶然性から、この写真に美しい瞬間が刻み込まれたわけだが、自然と人間の共存を訴えているかのようだ。 「Ripples Vol. 2 "Earth"」に収録されている楽曲は、時には照りつける太陽のようにリスナーを奮い立たせ、時には静かな海のように癒してくれるが、リスナーが生活におけるどんなに些細な行為であっても、地球の保護に貢献したくなるインスピレーションになることを願っている。 バルーチャ・ハシム 2010年8月9日 LAにて
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RIPPLES..... REFLECTIONS OF
2010-09-22 発売 / LACD-0184 / ¥2,619(税込) / LASTRUM
RIPPLES..... REFLECTIONS OF
- 1. The Dr & The Diamond / David Axelrod
- 2. It's All Around You / Tortoise
- 3. Hit The Right Thing(DJ Delight) / Natural Calamity
- 4. Sax Hoodlum / Major Force Productions (Kan Takagi Toshio Nakanishi K.U.D.O)
- 5. Knives Fighting Guns / Tommy Guerrero
- 6. From Here To Where / Blktop Project
- 7. Turkey Pot Pie / Money Mark
- 8. Ringa Ding Ding Ding / Lord Newborn And The Magic Skulls
- 9. Hot Thursday / Bei Bei and Shawn Lee
- 10. The Maidens Tale(Tommy Guerrero Remix) / Shawn Lee
- 11. Te Quiero Mucho / Mexican Institute of Sound
- 12. Tomorrow's Gold? / Money Mark
- 13. Cheeks / Ray Barbee & The Mattson 2
- 14. Julian The Mountain / The Mattson 2
- 15. Don't Throw Me Away / The Mumlers
- 16. Where Is Your Love? / Bing Ji Ling
- 17. Black Butterfly / Money Mark
- 18. So Blue Its Black / Tommy Guerrero